介護を知る−2
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DAY-2
6.レクリエーションの意義
6.レクリエーションの目的と意義
介護施設などでは、高齢者の方が気軽に、そして楽しみながら身体や脳を動かすことのできるレクリエーションを行っています。一口にレクリエーションと言っても、寝たきりの高齢者の方も参加できるものや、認知症高齢者の方でも参加できるもの、比較的身体も動く高齢者向けに介護予防に繋がるものなど様々。
デイサービスでは、身体の状況や介護度が違う高齢者に、皆が楽しめるレクリエーションを創意工夫して行っています。
⑴身体機能の維持・向上
そもそも高齢者がレクリエーションを行う目的は大きく分けて3つあります。第一が、身体を適度に動かすことで身体機能の維持や向上を図るというもの。普段の生活で高齢者の方は身体を動かす機会が減り、筋力の低下や介護度の進行などの恐れが若い頃と比べて大きくなります。総務省の統計によると、65歳から74歳の高齢者の方の1日の時間の使い方に関する調査では、テレビや雑誌、新聞を読むなどの時間が圧倒的に他の世代と比べて多く、運動量が減っていることが分かります。こうした高齢者の生活に適度な運動を取り入れるという意味でも、レクリエーションは大きな役割を果たすのです。
⑵認知症予防・悪化防止
また、第2の目的としてあげられるのがレクリエーションを通じた脳の活性化です。手先や頭を使うことで脳を活性化し、認知症の予防や認知症症状の進行を遅らせるなどの働きがレクリエーションにはあると言われており、音楽療法や回想法など認知症に関するレクエリエーションへの研究も世界では進んでいます。
⑶生活の質=QOLの向上
そして第3に挙げられるのが、レクリエーションを通じた人とのコミュニケーションの活発化や生きがい創出によって高齢者の方の生活の質(=QOL)の向上を図るというものです。
生活に適度に取り入れることで、高齢者にとって様々ないい影響を及ぼすことが期待できるレクリエーションについて、知っておきましょう。
■脳を使うレクリエーション
言葉遊びや計算など、高齢者が脳を使って楽しむことのできるレクリエーションは、「脳トレ」などという言葉で広く普及しています。こうした頭を使ったレクリエーションは高齢者の方にとって脳の働きを活性化するのに非常に効果があると言われています。
脳を活性化するためには、「考える」「挑戦する」「判断する」などの行動がいいと言われており、例えば簡単な計算を素早く解いていく計算ゲームや、ことわざや漢字など高齢者の方に馴染みのある言葉を使ったゲーム、パズルを解くなどのレクリエーションは認知症予防にも繋がるレクリエーションのひとつです。
既に認知症の高齢者の方に対しても、認知症症状の進行を遅らせる効果がありますので、是非取り入れてみましょう。ただし、認知症症状特有の認知能力の低下などにより、ルールが複雑だったりするとレクリエーションに参加することも難しくなり、認知症高齢者の方のレクリエーションに対する意欲も低下してしまいますので、直感的に楽しめたり、簡単なルールでできるものなどを取り入れていくなど注意も必要です。
また、自分から物事に対する意欲を持つことが難しくなる認知症高齢者の方に対しては、興味が沸くような声かけもレクリエーションの導入でとても大切になってきますので、スタッフ間で協力しあい、声かけをすることも忘れないようにしていきましょう。
■身体を動かすレクリエーション
身体を使ったレクリエーションは、日常生活で身体を動かす機会の減った高齢者の方にとってとても大切な時間です。要介護者の方であれば、無理せず楽しみながら身体を動かすことで、機能回復などの効果も見込まれ、自立支援サポートにも繋がります。また、まだ介護が必要でない方にとっても、身体を動かすことは機能維持のために大切なこと。
日中、適度に身体を動かすことで、食欲が出たり、夜の睡眠がスムーズなったりするなど生活リズムを整える効果も期待できますから、高齢者の方にとって無理のない程度で身体を動かせるレクリエーションは積極的に取り入れていきましょう。
単に身体を動かす、という目的だけならリハビリなどもありますが、身体を動かすことが大きな目的のリハビリは当然、訓練としての要素が強く、高齢者の方にとってモチベーションを保つのも難しいもの。ゲーム的な要素を取り入れレクリエーションにすることで、リラックスして自発的に身体を動かすことができます。
高齢者の方の中には、寝たきりの方や車椅子を使っている方など身体機能にもばらつきがある場合もあるかもしれません。そうした場合も、車椅子に座ったまま手足を動かせるダンスや体操など、誰もが参加できる内容であるか、という点にも注意をし、全員が楽しめる内容のレクリエーションとなることを心がけてみましょう。
■手先・指先を使うレクリエーション
高齢者向けのレクリエーションで、多くの介護施設が取り入れているのがハサミや針と糸など道具を使った工作系の手先・指先を使ったレクリエーションです。工作は、手先を動かすことにより、脳の働きを活性化させる効果があるだけでなく、参加者がどのくらい手先を動かすことができるのかを把握する時間にもなります。
また、昔懐かしいお手玉や、男性であれば紙飛行機などのおもちゃを作ることで昔を思い出すこともでき、高齢者の方にも喜ばれるレクリエーションのひとつです。
でき上がった作品は、達成感を参加者にもたらしますし、お部屋に飾ったり、家族へのプレゼントとすることもできるため、レクリエーションへの参加意欲やレクリエーション以外の時間の楽しみも創出することができるなど、生きがいづくりにも貢献します。
最近では、工作などで作ったものをバザーで販売するなど趣味活動として続けるだけでなく、社会に参加するきっかけにもなるような工夫をしている介護施設も見られますので、工夫次第で高齢者の方の世界を広げることができるレクリエーションとして、是非積極的に取り組んでいきたいレクのひとつです。