top of page

​介助の基本−2

2

DAY-2

5.はじめての食事介助

6.はじめての入浴介助

5.はじめての食事介助


■知っておきたい高齢者の食事の特徴

⑴やわらかいものを好む
高齢者は歯や顎の力が落ちているため、しっかり噛まなくても食べられるやわらかい食材や料理を好むようになります。また、のどの筋力が衰え、飲み込む(嚥下)力も低下するので、硬い食べ物はのどを通りにくくなります。


⑵乾燥したものは飲み込みづらい
加齢とともに唾液の分泌量が減少し、のど周辺の筋力も衰えるため、パンやビスケット、サツマイモなどパサパサした食材を飲み込みづらくなります。水気を多く含んだ食材やとろみのついた料理のほうがスムーズに食べられます。


⑶のどの渇きを感じにくい
高齢者は自分でのどの渇きを感じにくくなります。そのため、高齢者が自ら水分を欲しがるタイミングを待っているだけでは、1日に必要な水分を摂取してもらうことができません。小まめに水分補給を促しながら飲んだ量を確認し、十分な水分を摂ってもらうよう心がける必要があります。


⑷濃い味付けを好むようになる
加齢とともに味覚や嗅覚は衰えていきます。若い頃と比べて料理の甘さや辛さを感じにくくなるため、「味が薄い」と言って調味料を多量に使用したり、以前よりも濃い味付けを好んだりするようになります。また、嗅覚が鈍くなることで料理のおいしそうな匂いから食欲をそそられなくなり、食欲そのものが減退します。


⑸胃もたれしやすい
胃粘液の分泌量の減少や腸の運動能力の低下により消化機能が衰え、胃もたれや便秘が起こりやすくなります。これらも食欲不振を招く原因です。
 


■食事のときの正しい姿勢


高齢者の方へ食事を提供するときは、「誤嚥(ごえん)」に細心の注意を払いましょう。誤嚥のリスクを下げるには、正しい姿勢を保つことが重要です。
 
⑴テーブルで食事する場合、膝が90度に曲がるくらいの位置で。
自力で座位(座る姿勢)を保てる方なら、なるべく椅子や車椅子に座って食事をしてもらうようにします。椅子の高さは、深く腰掛けた状態で足が床にしっかりとついて、かつ膝が90度に曲がるくらいの位置がベストです。テーブルの高さは、軽い前傾姿勢の状態で腕を乗せた際に肘が90度に曲がるくらいが適切です。また、前傾姿勢を保ち、椅子から落ちないようにするために、背中や頭の後ろなどにクッションを入れて支えるのもおすすめです。
 ※車椅子を使用している方の場合、基本的に足は床に置くようにしましょう。足が浮いていることで、食べられる量が減る場合があります。
 
⑵リクライニング車椅子は身体の状態に応じて45~80度で。

リクライニング車椅子を使用している人の場合、リクライニングの角度は椅子のときと同様ですが、身体状態や本人の希望に合わせて45~80度くらいに保ちましょう。利用者様とコミュニケーションをとりながら、無理のかからない角度をみつけてください。膝は90度に曲げ、足はステップにしっかりと乗せます。身体が安定しないようであれば、背中や頭の後ろにクッションなどを入れてあげましょう。
 
⑶ベッドで食事をする場合も身体状態に合わせた対応を。
ベッドで食事をする場合はリクライニング車椅子と同様、利用者様の身体状況や希望に合わせて、リクライニングの角度を45~80度くらいに保ちます。その際、腰はベッドのリクライニング部分にしっかりと沿い、隙間ができないようにしましょう。膝は軽く曲げられるようにして、その下にクッションなどを挟んであげると姿勢が楽になります。首を安定させるために、首下から後頭部の辺りにクッションや枕を挟んであげても良いでしょう。
 

■食事を始める前に


食事はリラックスしておいしく食べてもらえる状態が理想です。実際にものを食べ始める前に準備をしましょう。
 
⑴排泄を済ませましょう。

落ち着いて食事をするために食事前に排泄を済ませてもらいましょう。途中でトイレに行くと、一旦食事を中断しなければなりません。また、同室に設置されているポータブルトイレを使用する場合は、部屋の中に排泄物のニオイが残り、それ以上食事が進まなくなる可能性もあります。あらかじめ便意や尿意がないかを必ず確認し、ポータブルトイレに排泄した場合はニオイの対策まで済ませてから、すっきりした状態で気持ち良く食事を始められるようにしましょう。
 
⑵食事しやすい環境を整えましょう。
テレビなどがついていると、ついそちらが気になり食事に集中できない可能性が高まります。食事を始める前にテレビは消しておきましょう。あまりにも部屋が静かな状態では、緊張してしまう可能性がありますので、ゆったりとした音楽をかけ、リラックスできる環境をつくるのも効果的です。
 
⑷口の中を清潔にしましょう。
食事の直前に、うがいや歯磨きなどをして口の中を清潔にしておきましょう。特に嚥下障害のある利用者様の場合、口の中に汚れが残っている状態で誤嚥してしまうと、細菌が気管に入り込み誤嚥性肺炎を発症するリスクが高まります。また、食事前に口の中をきれいにし、舌苔なども取り除いておくことで味を感じやすくなるだけでなく、唾液の分泌が活性化し、食べ物を飲み込みやすくなります。
 
⑸唾液の分泌を促すトレーニングをしましょう。
食べ物をのどに詰まらせたり、むせたりする回数が多くなると、食事に対して苦手意識を持つ可能性があります。ものを食べる前に嚥下体操や口腔体操などを行い、スムーズに食べられるようにしてあげましょう。
 
⑹手を清潔にしましょう。
風邪や感染症を予防するためにも食事の前には手を洗いや消毒をしましょう。認知症がある方などは、手で食べ物をつかんでしまうこともあります。そのときの身体状況に応じて、濡れタオルやウェットティッシュなどで手を拭いてあげましょう。
 
⑺安全な姿勢を確保しましょう。
肺炎の要因となる誤嚥を避けるためには、飲み込んだ食べ物が気管に入らないように注意する必要があります。身体状態に応じて、お腹や腰に力の入りやすい姿勢を確保してあげましょう。
 
⑻献立を説明しましょう。
「おいしいですね!」「これは〇〇のような味です」などの言葉と一緒に献立を説明し、食欲を刺激しましょう。自発的に「食べたい」と思ってもらうためです。あらかじめ食べ物の好き嫌いを把握しておけば、苦手なものが入っていてもおいしく食べてもらえるように工夫したり、食べてもらう順番やタイミングを考えたりできます。


【食事介助を安全に行うためのポイント】

●目を覚ましているか確認しましょう。
食事介助の前に声を掛けて、意識がはっきりしているかを確認しましょう。うつろな状態でのお食事は誤嚥(ごえん)のリスクを高めてしまいます。

●口のなかの状態を確認しましょう。
食事をよりおいしく味わうために、うがいや軽い歯みがきで口のなかを清潔にしておくことが大切です。また、口のなかが乾燥していると食べものを飲み込みにくくなります。水やお茶などで口のなかを湿った状態にしてから、食事に入るようにしましょう。

●正しい姿勢になっているか確認しましょう。
正しい姿勢も、食事中の誤嚥(ごえん)を防ぐための重要なポイントです。

5.はじめての入浴介助

 

■高齢者の入浴の注意点

【ヒートショックについて】

ヒートショックとは、温度差による肉体的ショック症状のことです。身体の弱い高齢者はヒートショックが起こりやすく、寒い冬場の発生率が格段に高くなります。暖房の効いた暖かい部屋から、冷え切った浴室での熱いシャワー。このごく普通の入浴が心臓に大きな負担をかけてしまうのです。温度変化が急激すぎると血圧が一気に上下して、心臓や全身の血管に異変が起きます。ヒートショックによる心筋梗塞・脳梗塞・脳卒中・不整脈リスクは高く、軽い失神を起こすだけでも滑って頭を打つなど、大変な危険が伴います。

【脱衣所の寒さとお湯の熱さ】 

入浴時、裸になり『脱衣所の寒さ』で冷え切った身体が『お湯の熱さ』で急速に温まることになります。どの程度の温度差で血圧が急上昇し、心臓に大きな負担がかかるのでしょう?医学的にはおよそ10度以上の差があるといけない考えられています。脱衣室や浴室に室温計や湯温計を設置し、確認しながら入浴するとヒートショックのリスクを減らすことができます。

【ヒートショック対策】

●はじめにシャワーを出したり、暖房を調整し、浴室と脱衣所の温度差がないようにしておきましょう。

●高齢者の入浴は半身浴が基本。高齢者の場合は、肩までつかる全身浴は心臓への負担が大きいので避けましょう。基本は半身浴での入浴とし、温度は38度~40度くらいが適温です。

●入浴はできるだけ短い時間の中で、着替え・入浴を済ませましょう。目安時間は全部で20分以内が望ましいでしょう。

●浴槽に入っている時間は夏場で3分、冬場で5分~7分くらいを目安に入浴しましょう。10分以上は身体に負担が大きく、リスクが非常に高くなるのでやめましょう。

⑤適正な湯温は、夏場38~40度、冬場39度~41度です。

■入浴介助の手順とポイント

【事前の準備】


①バスタオルとフェイスタオル、洗体タオルの用意しましょう。
②着替え、リハパン・オムツや尿取りパッドの用意しましょう。
③シャワーチェアや転倒防止マットなどを設置しましょう。
④利用者様のバイタル測定、全身チェックを行いましょう。※1
⑤必要に応じて保湿剤や爪切り、病院で処方された薬や処置の用具、湿布などを準備しましょう。※2
⑥浴槽にお湯を溜め、浴室と脱衣室を温めておきましょう。浴室と脱衣室の温度差に注意!
※気候や好み、健康状態を考慮し、必ず事前に確認をしましょう。
⑦入浴拒否が強い方へは、事前に声掛けのタイミングや要領などを確認しておくとスムーズに誘導できます。※3
⑧基本的な入浴順番は、デイ利用者様→ショートステイで当日帰られる方→長期利用者様→最後に、C型肝炎や梅毒等の感染・発症者の方です。

※1 全身チェックの際にわずかでもアザや傷、腫れやむくみなどがあればすぐに報告し、上長に目視確認してもらいましょう。また、バイタルチェックの際、血圧が100~130より上下した場合はすぐに上長へ報告し、確認をとった上で入浴を実施しましょう。

 

※2 褥瘡、傷病等の処置に関してはすべて看護師対応が基本です。湿布や塗り薬(市販クリームや保湿剤)、爪切りは職員が行うことが可能です。ただし、巻き爪や塗り薬(処方薬)に関しては、絶対に勝手な判断で行わないでください。必ず、上長に確認し指示を仰いでください。


※3 入浴拒否が強い方へは対応の指示をもらいましょう。その日の気分や環境などによって拒否が強くなる場合は、無理をせず時間を置いて再度声掛けをしたり、落ち着くタイミングを見計らうことでスムーズに誘導できる可能性もあります。焦らず、不安や感情的な態度にならないよう注意しましょう。

【拒否の方への声掛け対応事例】


●体重測定を行いますので、こちらへどうぞ。
●着替えを預かっていますので着替えて帰りましょう。
●薬の処置がありますので、こちらへお願いします。
●本日お帰りなので、その前にさっぱりしましょう。
●本日、ご家族から頼まれましたよ。

【脱衣介助】


●片麻痺がある方の脱衣は、健側から行いましょう。
●必ず次の動作を伝えて誘導しましょう。
●すべてを介助せず、自分でできることは行っていただくよう促しましょう。

【浴室介助】


①まずは、かけ湯かシャワーで。

足元に注意し椅子に腰かけてもらい、再度手で湯温を確認してから、足元からゆっくりお湯をかけましょう。湯温を調整しながら、少しずつ慣れてもらいましょう。
②身体が温まったら、頭髪から洗いましょう。
頭皮は指の腹でやさしくこすります。シャンプーの流し残しがないように、すすぎはしっかりおこないましょう。
③身体はボディタオルでやさしく洗います。
高齢者の方は皮膚が弱く、力を入れてこすると傷つきやすいので注意しましょう。汗をかきやすい場所(脇、乳房の下、肘や膝の内側など)は、特に洗い残しがないように気をつけてください。また、排泄物で汚れやすい場所もしっかりと洗いましょう。拘縮(身体の一部が固まってしまった状態で動かなかったり、動きが悪い症状)がある方は、手の内側や指の間、間接部なども良く洗いましょう。
④洗い終わったら、お湯に浸かります。
手すりをつかんでもらい、身体を支えながらゆっくりと浴槽に入ってもらいます。のぼせる危険があるので、お湯に浸かる時間は5分程度にとどめましょう。浴槽から出るときはバランスを崩さないよう身体を支え、声掛けをしながらゆっくり行います。
⑤浴槽から出たら湯を抜きましょう。
着衣が終わる頃には湯が抜け、次の入浴のために効率的です。

【入浴後の注意点】


●体や頭の水分をしっかりタオルで拭き取ってから着衣しましょう。入浴後は血圧の変動でふらつく場合がありますので、椅子に座ってゆっくりと着衣を行います。
●入浴後の体調変化に気をつけ、しっかり水分補給をしてもらいましょう。
●入浴後は皮膚や爪が柔らかくなりますので、必要に応じて保湿剤を塗ったり、爪切りをすると良いでしょう。皮膚科で処方されている軟膏なども、入浴後に塗布しましょう。
●片麻痺のある方の着衣の際は患側から着せるようにします。

入浴介助
食事介助
bottom of page