介助の基本−2
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DAY-2
4.車椅子の使用と介助方法
5.移乗・移動の方法
4.車椅子の使用と介助方法
【車椅子の基本構造】
※下記図参照
【基本操作】
車椅子介助の基本操作ので大切なことは、キャスター(前輪)を浮かす操作です。この操作を応用して、段差の乗り越えやエレベーターの乗り降りを行ないます。
【停止しているとき】
車椅子が坂を走り出してしまったら止めようがありません。車椅子に乗っている方の命を預かっているのですから、ブレーキの操作は念には念を入れて確認してください。
●車椅子に乗り降りするときは、必ず両サイドのブレーキをかけましょう。絶対厳守!
●通常ブレーキは後方に引くと掛かり、前方に押すと介助されます。逆操作の車椅子もあるので注意しましょう。
【移動する前の注意】
●浅く腰掛けていませんか?
●身体は傾いていませんか?
●手はひざの上ににありますか?
●フットレストに足が乗っていますか?
●ブレーキは掛かっていますか?
【移動中の注意】
●「動きます」「止まります」「曲がります」「前を上げます」など声を掛けましょう。
●急な加速、停止、方向転換をしてはいけません。
●つま先を扉や壁にぶつけないようにしましょう。
●フットレストを歩行者にぶつけないようにしましょう。
●手がアームレストの上にあるとひじなどがぶつかる可能性があります。ひざの上に置くようにしましょう。
【状況に応じた押し方】
急な坂道の場合、介助者が車椅子の背に自分の体重を掛けるようにすると少ない力で進行します。ゆるい坂道の場合は前向きでもかまいませんが、前に引っ張られる感じがする場合は、後ろ向きの方が安全です。なだらかな坂を前向きで下りている時に急に止まると、座位が不安定の場合は落ちることがありますので注意が必要です。
●でこぼこ道:キャスターを上げて押してください。
●上り坂:前向きに上ります。身体を少し前傾してしっかり押します。
●下り坂:急な下り坂は後ろ向きにゆっくり下ります。
【段差の昇降】
車椅子のキャスターは小さいため、わずかな段差でも引っかかったり、隙間に落ち込んだりします。そのような場合は、キャスターを浮かすことによって避けることができます。また、段差を昇り降りしやすくします。
【車椅子の基本構造】
【車椅子の広げ方】
【車椅子の折りたたみ方】
【段差を上がる/車椅子前向き】
【段差を下りる/車椅子後ろ向き】
【溝を超える/車椅子前向き】
【スロープの通過】
【段差を上がる/車椅子後ろ向き】
【段差を下りる/車椅子前向き】
【溝を超える/車椅子後ろ向き】
5.移乗・移動の方法
■基本移乗/車椅子⇄ベッド
【移乗の前に車椅子の点検を】
⑴ブレーキの効き具合
停車時にしっかりとブレーキが効いた状態でないと思わぬ事故に発展する恐れがあります。
⑵タイヤの空気圧
段差にぶつかった際のショックの吸収や乗り心地に影響してくるため、空気圧の確認は定期的に行いましょう。
⑶座席の座り心地
一般的な車椅子のシートや背もたれは、硬めの布などの素材で作られていますが、長時間座る場合、腰を痛めたり、褥瘡(床ずれ)の原因となったりする可能性があります。体への負担を軽減できるように、クッションを腰に当てる、座面に低反発マットを敷くなどの工夫をしましょう。
【車椅子移乗における5つの注意点】
⑴べッドと車椅子の間隔は30〜45度。
●スムーズな移乗を可能にするためには、できる限りベッドと車椅子の位置を近づけます。
●ベッドのフレームと車椅子のホイールがある面との角度を30〜45度に近づけます。
●必ずブレーキとフットレストをあげるのを忘れずに!!
⑵負担を減らすために、ポジションから。
●まずは、できる限り浅めにベッドに座ってもらいます。
●利用者様の腰に両腕を回し、利用者様には介助者の両肩に腕を回し、抱きしめてもらうようにします。
●利用者様が腰に痛みや違和感を訴える場合は、背中を抱えるようにします。
⑶前傾姿勢で、自力で立ち上がりやすい状態に。
●介助者は、利用者様の上半身を自分がいる方向(前方)へ引き寄せます。
●介助者は利用者様の足の間に自分の足を差し込む(移動と対側の足)と介助しやすくなります。
●上半身をうまく預けてもらえれば、重心の集まるおしりを自力で浮かせやすくなります。
※自分の体を相手の体の方へ近づけた場合、腕力だけでは体を持ち上げられず、そのままベッドへ介助者ごと倒れ込んでしまうこともあるので注意!これは特に女性が男性を介助する場合によくある例です。
⑷介助者は両脚を広げ、安定した体勢を。
●介助者の下半身については、両脚を開いた状態で安定を保ちましょう。
●利用者様の両脚の外側(もしくは間)に片足を置き、支えます。
●片方の脚は車椅子の外側に置き、座面に腰を落とした勢いで車椅子が動かないようにしましょう。
⑸声掛けでお互いの意思疎通を。
●体を持ち上げる直前に「“イチ、ニノ、サン!”で動かします」と声を掛けます。
●意思確認をおこない、お互いのタイミングを合わせましょう。
【ベッドから車椅子へ移乗】
【車椅子からベッドへの移乗】
【片麻痺で自立できる場合のポイント】
■ベッドでの移動
【平行移動】
『たすきがけ』に腕を差し入れると、体幹全体に力が加わる腕の差し込み方がポイントです。
①自分から見て奥の肩を持ち上げ、首筋から腕を差し入れます。
②首とベッド面の間の空間(中央写真a)に腕を差し入れると、『たすきがけ』に抱えられます。
③たすきがけで半身を抱えて移動させ、その後、腰、足と順番に移動しましょう。
【起き上がり】
たすき掛けに抱えることによって、利用者様の状態が支点を軸に『弧』を描くように起こすと、腰に負担を掛けず、無理なく行えます。
【代表的な体位の名称】
●仰臥位(ぎょうがい):
仰向けに寝た状態
●側臥位(そくがい):
横向きに寝た状態
●端座位(たんざい):
ベッドに腰掛け、両足を垂らす姿勢
【仰向け(仰臥位)から横向き(側臥位)にする方法】
①体位変換を行う前に横向きになることを説明します。
②顔を倒す方向に向いてもらいます。
③両腕を胸の上でしっかりと組んでください。
④両膝を立て、かかとをお尻に近づけます。
⑤腰と膝に右手を置き、左手は肩を持ちます。
⑥介護者の右手で膝と腰を倒し、次に左手で肩を起こします。
■褥瘡予防と体位変換
同じ体位(姿勢)が続かないように、仰向け、横向きが交互になるように、体の向きを変えましょう。体位変換は2時間ごとを目安にするとよいですが、利用者様の生活リズムに合わせて計画すると実施しやすいです。特に夜間の体位変換は、介護者の就寝前、起床時などに合わせて行うと負担を軽減できます。
褥瘡(床ずれ)予防の第一歩は毎日の皮膚観察です。皮膚の赤みを発見したら、その部分が圧迫されないように体の向きを変えてみます。30分後、皮膚の赤みが消えていれば褥瘡ではありません。赤みが消えない場合は褥瘡の可能性がありますので、自己判断せず上長、管理者、生活相談員、看護師などに相談しましょう。その際には状態を記録に必ず残しましょう。
■褥瘡になりやすい部分
⑴仰向けの場合
おしりの中央にある骨が突出している仙骨部(せんこつぶ)に最もできやすく、後頭部、肩甲骨部(けんこうこつぶ)、かかとなどにもできます。
⑵横向きに寝ている場合
耳、肩、肘(ひじ)、腰骨が突出している腸骨部(ちょうこつぶ)、太ももの骨が出ている部分(大転子部−だいてんしぶ−)、膝(ひざ)、くるぶしなどにできます。
⑶うつぶせの場合
耳、肩、膝、つまさきなどにできます。また、女性の場合は乳房、男性の場合は性器にもできます。
⑷車椅子に座っている場合
おしりの骨(坐骨部−ざこつぶ−)、尾骨部(びこつぶ)、背部、肘などにできます。
【体位変換のワンポイントアドバイス】
一人で介助すると利用者様を引きずってしまうことがあるため、皮膚に摩擦が起きやすくなります。また、利用者様の転落・骨折の危険性もあるため、可能であれば二人で介助しましょう。一人で行う場合は、無理をせず部分的に少しずつ移動させるようにします。