top of page

感染症・食中毒対応

1.感染症の基礎知識

■感染症とは?

ウイルスや細菌などの病原体が体内に侵入して増殖し、発熱、下痢、せきなどの症状がでる病気のことをいいます。人から人へ感染する伝染性の感染症のほかに、動物や昆虫から、また傷口から感染するものも含まれます。

 

⑴主な病原体

ウイルス:インフルエンザ・風邪・肝炎(A〜E型)、新型コロナなど

細菌:腸管出血性大腸菌(O157等)・赤痢・コレラなど

その他:疥癬・白癬など

 

⑵主な感染経路

【空気感染】

飛沫の水分が蒸発した飛沫(エアロゾル)が、飛沫核(直径約5μm以下)となって空中に浮遊し、それを吸い込むことで感染。

結核・麻しん(はしか)・水痘など

【飛沫感染】

会話やくしゃみ・咳などをしたときのしぶき(飛沫:直径約5μm以上)を吸入して感染。飛沫は1メートル以内の距離を飛んで床に落下します。

かぜ・インフルエンザ・レジオネラ・新型コロナなど

【接触感染】

皮膚や粘膜にいる病原体が手指や被服などを介して感染。

MRSA・疥癬など

 

【経口感染】

病原体に汚染された水や食べ物、手指などが口に入ることで感染。

腸管出血性大腸菌感染症(O157等)・ノロウイルス・A型肝炎・赤痢・食中毒など

【血液感染】

血液の中の病原体が注射や傷口への接触などにより、体内に入ることで感染。

B型肝炎・C型肝炎・エイズなど

 

■感染症の成り立ち

 

感染が成り立つには、体に侵入する病原体の量と、その病原体に対する抵抗力(免疫)が関係します。病原体の侵入する量が多いほど、また、身体の抵抗力が弱いほど感染しやすくなります。

 

【感染成立の3要素】

すべての要素がそろったときに感染が成立します。

①感染源(感染した人や動物・その排泄物や環境〜病原体)

②感染経路(道すじ)

③感染をうけやすい人(抵抗力の弱い人・高齢者・乳幼児等)

 

 

2.日頃の感染症予防対策

■標準予防策(スタンダードプレコーション)

『人の血液・体液や人から分泌・排泄されるすべての物質(尿・痰・便・膿<うみ>など)は感染症のおそれがある』とみなして対応する方法です。これらの物質に触れた後は手洗いを励行し、あらかじめ触れるおそれのあるときは、手袋・エプロンなどを着用しましょう。

 

■手洗い

感染症予防の基本は手洗いです。まず、確認!

●爪は短く切りましょう。

●時計や指輪は外しましょう。

●手首の上5cm 位まで十分に両手を濡らしましょう。

●洗浄剤を手のひらに取り、十分泡立てましょう。

 

①手のひらをあわせてよくこすります。

②手の甲をのばすようにこすります。

③両手の指先、爪の間をよく洗います。

④指の間を十分洗います。 

⑤親指と手掌をねじり洗いします。(親指をもう片方の手で包み、こする。両手を同様に)

⑥手首も忘れずに洗い、指先を上に向けて流水で洗い流します。

 

【調理従事者の手洗い】

⑴まず確認を!

●手指に傷やひどい手荒れはないですか?

●手の汚れはひどくないですか?

●爪は短く切っていますか?

●マニキュアはしていませんか?

●指輪・腕時計・ブレスレットははずしましたか?

 

⑵手洗いの時期

●調理を始める前、次の作業にとりかかるとき

●盛り付けを始める前 、食品全般を取り扱ったあと

●調理器具を触ったあと、床に落ちた物を拾ったあと

●汚染箇所・汚染部位を触った後、扉の取っ手を触ったあと

●スイッチを触ったあと、トイレのあと

●厨房外から入ってきたとき、汚れたと思ったとき

●その他必要に応じて

⑶手洗いの方法

①調理業務に就く前に指輪や腕時計をはずします。

②水で洗います。

③石けんを使ってもみ洗いします(30秒間)。

④爪先をブラシで洗います。0.2〜1%逆性石けん液などを手につけ30秒〜2分間程度もみ洗いします。

⑧紙タオルで拭きます。

⑤真水ですすいで石鹸を完全に落とします(20 秒間)。

⑦真水でよくすすぎます。

⑧ペーパータオルで拭きましょう。

※共用のタオルは使用してはいけません。

※洗面器などに作り置きの消毒薬を使用するのはやめましょう。

 

 

■おむつ交換

【感染症予防のポイント】

●オムツ交換は、必ず使い捨て手袋を着用。

利用者様ごとに交換し、手袋を外した際には手洗いを行います。

●オムツ交換の際、利用者様一人ごとに手洗いや手指消毒をしてください。

●おむつの一斉交換は感染拡大の危険が高くなるため、個別ケアが必要です。

 

ケアスタッフが病原体の媒体者にならないために、充分な注意をしましょう。便にはO157やノロウイルスなどのウイルス類など、多くの細菌が混入しています。

■吐物処理について

【用意するもの】

●使い捨てタオル、ティッシュ、新聞紙など 

●塩素系漂白剤

●ビニール袋などの液漏れしない密封できる袋

●マスク(ある場合)

●使い捨て手袋

●手洗い用の石けん

■消毒方法

【消毒薬の調整】

ノロウイルスの消毒は、消毒用アルコールは効きにくいため、塩素系漂白剤(塩素剤)で行います。塩素濃度が0.05〜0.1%になるようにして使用します。市販の塩素剤の多くは、塩素濃度が約5%ですので、50〜100倍に希釈して使用します。

希釈の目安としては、500mlのペットボトル1本に、ペットボトルのキャップ1〜2杯の塩素剤を入れると簡単です。調整する際は、直接塩素剤が手に付かないように手袋をしてください。塩素のにおいが少なめの塩素系消毒薬もありますが、含まれる塩素濃度が異なりますので、希釈方法に気を付けてください(約1%の濃度なら、10〜20倍に希釈して使用します。)。

 

■感染症早期発見ポイント

【日々の健康観察】

●いつもと違うことがないか確認し、記録しましょう。

●個人、同室、同一フロア、施設全体の健康状態がわかるように記録しましょう。

●異常を発見した場合は、医師の診察を勧めましょう。

【観察のポイント】

●いつもと違うことがないか確認し、記録しましょう。

■職員の健康管理

介護に携わるケアスタッフ自身が感染源とならないよう、日々の自己の健康管理に心がけましょう。

 

●施設長は定期健康診断を促しましょう。

●食品を取り扱う職員は、特に次の点に留意しましょう。

①伝染性の病気、手指に化膿性の傷があるときは、直接食品を取り扱わないようにしましょう。

②清潔で洗濯のできる調理・配膳専用のエプロン、三角巾やマスクを着用しましょう。

③食品を取り扱うときは、手洗いを励行し、手指の清潔を保つために、爪は短くし、作業中はマニキュア、指輪、時計ははずしましょう。

④体調不良(頭痛、発熱、腹痛、下痢、嘔吐等の有症状時)のときは他にも同様の職員がいないか確認し、必要に応じて医師の診断を受けましょう。

⑤生食(特にレバー、冬場のカキなど)はなるべく避け、十分加熱して食べるようにしましょう。

 

3.感染症を知る

4.Q&A

Q: 手指の消毒にはどんな方法があるのでしょうか?

A:洗浄法(スクラブ法)→消毒薬を約3ml手に取り、よく泡立てながら洗浄する(30秒以上)。さらに流水で洗い、ペーパータオルでふき取る。

擦式法(ラビング法)→アルコール含有の消毒薬を3ml手に取り、よく擦り込み(30秒以上)、乾かす。

擦式法(ラビング法)ゲル・ジェルによるもの→アルコール含有のゲル・ジェル消毒薬を約2ml手に取り、よく擦り込み(30秒以上)、乾かす。

清拭法(ワイピング法) →アルコール含浸綿で拭き取る。

 

※ ラビング法は、手が汚れているときには無効であることに注意しましょう。手が汚れている場合には、石鹸と流水で洗ったあとに行います。

 

Q:なぜ、逆性石鹸(オスバン、ウエルパス、ハイアミンなど)は石鹸分を十分に落とさないと効果がなくなるのですか?

A:石鹸は『陰イオン界面活性剤』に分類され、逆性石鹸は『陽イオン界面活性剤』になります。つまり、電気的性質が逆であるため、石鹸分が残っていると消毒効果がなくなってしまいます。逆性石鹸に界面活性剤を配合した皮膚の洗浄と殺菌・消毒が同時にできる製品もあります。

 

Q:感染予防の点から、各居室、廊下などの消毒はどのように考えたらよいのでしょうか?

A: 天井、壁(ベッドの位置などで患者と接触する部分以外)、床は感染のリスクが低く、通常は消毒の必要はありません。特に、消毒剤の噴霧はデメリットのほうが大きいといえます。それは『消毒剤はたんぱく質の変性作用や凝固作用が作用メカニズムであるため、細胞毒性を有する』ことに起因します。消毒剤の室内噴霧をおこなうと、消毒をおこなう人や周りの人が消毒剤を大量に吸入したり、眼に浴びたりするなどして、その際の毒性が問題になるのです。

 

Q:ユニホームに噴霧しているアルコールスプレーの効果はあるのでしょうか?

A: 清拭による消毒でアルコールを使用する場合には、十分に濡れたアルコール綿・ガーゼを使用して消毒効果を得ます。それから考えると、ユニホーム等にひと吹きふた吹きの噴霧では効果は疑わしく、なによりも、アルコールを吸入してしまう害もあることから、無駄なことです。それよりは毎日ユニホームを着替えることのほうが効果的です。

 

 

5.ハウスルール

 

■予防

毎年10〜4月末までを感染症予防対策強化期間と定めます。

この期間中、下記の内容で各取り組みを実施してください。

 

⑴職員予防

●9時、15時、18時にうがい薬(施設常備)を使用してうがいを実施してください。

●施設入室時に手指洗浄剤を利用しての手洗いを実施してください。

●帰宅時に自宅でのうがいと手指洗浄剤を利用しての手洗いを実施してください。

⑵利用者様予防

●9時、15時にうがい薬(施設常備)を使用してうがいを実施してください。

●施設入室時に手指洗浄剤を利用しての手洗いを実施してください。

●10〜4月までの利用者様全員に、『感染症予防への取り組みについて』の書面を配布し、予防対策への理解と感染者の受け入れ拒否について理解を促します。

●利用日の当日朝、お迎え時にご家族ヒアリングと検温の完全実施を行います。発熱者の受入れは拒否してください。

⑶施設内予防

●施設内は次亜系消毒薬(レドックスター)を使用した加湿器(加熱式はNG)で室内除菌を常時行います。

●接触部位(ドアノブ、椅子手摺、テーブル、手摺)の消毒を午前中に実施してください。

 

■重要:施設内回覧事項

医療機関・各区保健所・介護保険課と協議を行い、2017年度より、施設におけるインフルエンザ発症に関する対策を更新いたしました。施設における感染拡大を可能な限り抑制でき、かつ多くの利用者様の利用を継続できるものに更新いたしました。

全職員の周知と、即日の対応開始をお願いいたします。

 

【インフルエンザ発生時対策】

病院にてインフルエンザの確定診断がでた場合、以下の行動を行ってください。

 

⑴管理者・上長への報告

ケアスタッフは、本マニュアル内にある症状で、インフルエンザの症状に該当する場合、いかなる時間帯や状況においても速やかに管理者(上長)に報告を行ってください。

 

⑵入院対応

通院先病院にて介護施設であることを医師に伝え、感染の可能性がある方の入院依頼を行いましょう。

※施設での感染者の看病は感染拡大の恐れがあり不可能なため。

 

⑶感染警戒期間

①インフルエンザ診断確定日を含む前3日間に利用があった利用者様への通知→「インフルエンザ罹患者」が発生したことと、今後3日間は、体調の変化に注意いただくよう明確にお伝えしましょう。

②診断確定日を含む後3日間に利用予定の利用者様への通知→「インフルエンザ罹患者」が発生したことを明確にお伝えし、利用について改めてご本人、ご家族の意思確認を行い、記録に残しておきましょう。

③診断確定日を含む後3日間に新たな感染疑いのある方が発生しなかった場合は、会社承認の上で正常営業再開とします。CM、ご家族への連絡を行ってください。

④警戒期間中は、3時間ごとにケアスタッフを含めた全員の体温を計測し、健康状態の把握を行ってください。(利用者様は必要に応じバイタルチェック)

状態が心配な利用者様が新たに発生した場合は、まずは他の利用者様との空間接触を極力抑える対応を取り、帰宅もしくは通院対応を行ってください。

■施設内で感染の疑いがある方へ

⑴疑いのある方と、そうでない方の空間隔離の実施。

別室が容易できない場合は、4面をパーティションで覆う。

⑵疑いがある方のご家族、CMへの報告と通院対応の許可。

⑶施設職員への情報共有、申し送りの徹底と二次感染予防措置。

⑷通院対応。

 

⑸行政機関への報告。

厚生労働省の基準に従い、本部にて対応を行います。

 

【報告の基準】

●施設内にて、死亡者・医師の判断重篤患者が1週間に2名以上発生した場合。

●感染症が疑われるものが、ある時点において10名もしくは、定員の半数以上になった場合。

●通常の動向とは異なる場合や必要と判断される場合。

bottom of page